欧州アートログ

ヨーロッパにおける企画展、ギャラリー、アートフェア等のログを淡々と書き記します。

ロンドン・ナショナル・ギャラリー(日本展を一層楽める絵画を現地より)[Log27]

ロンドンの美術館もコロナウイルスにより長期閉鎖を余儀なくされていましたが、色々対策を講じた上で7月以降順次再オープンしています。この度、ナショナル・ギャラリーを訪問しました。その模様を淡々と書き記します。

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記事のポイント

  • コロナ下で、厳密な時間予約制による入場管理
  • 入ってしまえば、中は結構人がいた
  • 東京・大阪展で見られないおススメは、こちら 

 

事務連絡

ロンドンでは美術館、ギャラリー等が7月以降その門戸をソロリと開いてきたところですが、逆に私事が忙しくなってしまいブログを放置してしまいました。先日、はてなさんより「君、一か月以上更新してないけど、どういうこと?」というメールを頂きハッとしました。ありがとうナッジ。

というわけで、本ブログもソロリと更新を再開しようと思います。暫く間が空いてしまったため文章の調子等がブレるかもしれませんが、ご容赦ください。

再開第一弾は、最近の西洋美術関連ブログの記事でエリアソン展(いま東京にいる人が羨ましい)と並んでよく見かける、ロンドン・ナショナル・ギャラリー展に便乗して、ナショナル・ギャラリー(現地現場)へ今月行ったレポートと致します。

 

入館等コロナ対策の状況

ナショナル・ギャラリーでは、というかロンドンの美術館では、現在、時間指定の事前予約制が採用されています。ネットでサクッと予約できる仕組みなので、ハードルは高くありません。しかし、「待合せまで時間があるから、少し時間をつぶすか」「トイレ借りて、10分だけ画を見ていくか」なんて贅沢な楽しみ方は不可能に。

今回、「明日時間あるからナショナル・ギャラリーでも行くか」と思って予約ページを開いたところ、週末ということもあり翌日分のタイムスロット(15分刻み)は結構埋まっていました。とはいえ、思い付きでも次の日に行ける状況。

そして、この時間指定は結構厳密で、チケットメールには現場に15分前以前に来るな!ということが2度ほど書いてあります。確かに、早めにみんなが到着すると其処で「密」になってしまうので、前のスロット組が入館してから次が来るのが正しい仕組みではありますが、ロンドンっぽくないなぁ。現場の列の入口でも、このスロット制は厳格に運用されていました。

なお、此処と大英博物館はコロナ以前から入口で金探によるチェックを行っているので、普段から入館の際に並びがちではあります。余談ですが、大英博物館は真裏から入ると行列が短いです。

 

時刻となり入館すると、最初に下のような看板がありました。さて、何通りの順路があるでしょうか?

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答え:4通り

Aを見た上で又はAをすっ飛ばして、BかCかのどちらかを選ぶ、という順路になっていました。一度入ってしまえば、そこから先は一方通行。とある絵を見たいからといって、順路を外れたり逆走したりすることは出来ません。今回、私はA+Bを選択しました。

入口までの厳密さとはうって変わって中に入ると結構混雑していて、比較的他人との距離が近いです。また、逆走は不可能ですが、Aコースはスタートとゴールが同じ地点であるため、試してみたところおかわり走行が可能でした。

入国管理はガチガチだけど、入ってしまえば結構ゆるい。成程、イギリスらしい…。

 

どんな作品があった?

さて、便宜上☝な見出しを付けましたが、名画がありすぎて文字で説明のしようもありません。

このため、東京・国立西洋美術館で開催中、大阪・国立国際美術館で開催予定の「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」のみどころ紹介ページ(2.構成と主な作品)に沿って、日本に行っていないけど日本展の理解の助けとなるであろう、個人的おススメ作品(超有名作家に限る)をご紹介します。

 

第1章 イタリア・ルネサンス絵画の収集

本当に沢山収集してあります。Aコースのほとんどがルネサンス前後を含めたイタリア絵画で占められています。しかし、個人的にこの辺の絵画への興味は薄いので、イタリア絵画のご紹介はありません。出だしから、日本展のタイトル無視です。

 

Aコースからご紹介するのは、ファン・エイクさんです。誰?と思った方は、下記をご一読下さい。

「エイクさん知らなかったよ」という方も、こちらの写真の絵は見たことあるのではないでしょうか?初期フランドルの大傑作、というか美術史上の大傑作「アルノルフィーニ夫妻像」です。

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私の趣味(写真撮影している人の写真を撮影する)に走りすぎて、肝心の絵画が光飛びしてしまいました。どうせネットで出回りまくっているので、ご容赦下さい。

Aコースの所要25分だなんて書いてありましたが、この絵を見ているだけで30分過ぎてしまいます。世界的有名絵画過ぎてコロナ以前はじっくり観ることが難しかった本作品も、制限入場下でじっくり鑑賞できました。エイクさんの鬼才っぷりに、感服しまくりです。

 

第2章 オランダ絵画の黄金時代

続いての第2章で国立西洋美術館・国際美術館が推しているのはフェルメールの「ヴァージナルの前に座る若い女性」。こちらには対であった(と思われる)作品がございます。それがこちら。

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作品名は「ヴァージナルの前に立つ若い女性」。この女性、立っても座っても此方側を見てきます。この作品は比較的小品で、他の絵画の間にひっそりと展示されているため、現場ではあまり気づかれていない逸品です。キューピットがカードゲームに興じているようにしか見えません。

 

第3章 ヴァン・ダイクとイギリス肖像画

肖像画の天才、ヴァン・ダイクさん。その師匠はルーベンスさんですが、ルーベンス工房名義の作品でありながら、その実ヴァン・ダイクさんが人物を描いたとされる絵で、私が「酔っ払い名画」No.1に認定している絵があります。それがこちら。

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情報量が多すぎて、この絵でボケろと言われたら、焦点を絞れません。

ヴァン・ダイクさん20歳頃、イングランドに渡る前の修業時代の作品。軽妙な肉体や服の筆致、表情や色彩の豊かさ等の特徴が出ています。ちなみに、今回少し調べてて初めて知ったのですが、ヴァン・ダイクさんは妄想の大友宗麟も描いているのですね!

 

第4章 グランド・ツアー

今回見ていないCコース案件のため、省略

 

第5章 スペイン絵画の発見

何時も思う。ベラスケスの描くハプスブルク顎の強烈なこと!以上。

 

第6章 風景画とピクチャレスク

ターナーさんは、好きです。「銃・鉄・病原菌」ならぬ「雨・蒸気・速度」が代表作ですが、こちらも有名作。007スカイフォールで、この絵の前でボンドとQが初対面するシーンは印象的ですね。

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第7章 イギリスにおけるフランス近代美術受容

みんな大好き印象派関連です。ちなみに、現場のゴッホコーナーには、5枚ほど作品を並べた端っこに「ひまわりは日本とそのあと豪州へ1年間の旅行中だよ」という旨の看板がありました。

 

さて、最初に印象派の元締めがロンドンで描いた作品をご紹介。

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テムズの水面の具合が、「印象・日の出」感ありますね。むしろ、この絵は「印象・日の出」の1年前、モネ氏が普仏戦争を回避するためロンドンに滞在していた時の作品。もしかしたら、モネ氏の印象派絵画には、19世紀末工場のばい煙で汚染されたロンドンのもやを経験したことが影響しているのかもしれません。

 

今回、日本展でセザンヌ先生の「プロヴァンスの丘」が展示されていると思います。先生がキュビを出している作品ですが、ロンドンの現場には新たにコレクターから借りて展示されている先生の作品があり、これがまた大変良いものでした。

2枚ありますが、下が新たに借りたもので、上の絵が1885~7年の作品、下が1892年で「丘」と同時期です。先生の作品は色々な作画の工夫がなされており、年代を考えながら観ると面白くて仕方ありません。敢えて横の解説を含めた写真を、どうぞ。

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感想は?

というわけで、今回は、私の趣味を多めに出しつつも、日本展の流れに沿った投稿にしてみました。

ナショナル・ギャラリーは画力の強めな絵が大量に並んでいて、行く日の気分に応じて色んな絵が訴えかけてきます。あぁ、今日はこの絵の気分なのかと、絵から気づかされることも。

コロナ下の順路に沿った鑑賞は、そんな気まぐれな鑑賞が出来ない一方、美術館側が考えてくれた鑑賞順に従って鑑賞することで西洋美術史をざっとおさらいすることが出来るよいものでした。それなりに人が居たとはいえコロナ前に比べると空いているので、一つの名画の前に滞在できる時間も長く取れました。

コロナウイルスの感染者数拡大が止まりませんが、くれぐれも気を付けつつ、状況に応じた楽しい夏を過ごされることを祈念しております。

ではまた。