欧州アートログ

ヨーロッパにおける企画展、ギャラリー、アートフェア等のログを淡々と書き記します。

新型コロナ:メガギャラリーの対応例 [Log12]

メガギャラリーを含めたアート界も、新型コロナウイルスの影響を受けています。その対応例を淡々と書き記します。

f:id:EuroArts:20200403185727p:plain

David Zwirner "Platform: New York" ウェブサイトより

 

記事のポイント

  •  オンラインで顧客との関係継続を図る動き
  •  自社だけでなく、他者への貢献を模索する動きも
  •  「公」もてんてこ舞いのなか、共助が広がる

 

オンラインでの対応例

欧米各国では厳格な外出禁止が敷かれており、メガギャラリーもこの困難をどう乗り越えるかということに腐心しています。アーティストたちも様々な動きを見せる中、ギャラリーも、インスタのライブ機能を活用しアーティストトーク(たまにアーティストが歌っていたりもしている)を開催する等、顧客との関係を継続しようと模索しています。

例えば、PACEは、本記事投稿日朝6時(日本時間)より、今一番アツいキュレーターハンス・ウルリッヒ・オブリストとアーティストのトルクワセ・ダイソンとの対談を実施しています。

なお、オブリヒトは、1月に東京芸大で講演を行ったことでもおなじみですが、先日英国政府に対して新型コロナウイルスを受けての緊急提言も行っています。

ウェブやSNSを活用した取組は、ギャラリーに限らず美術館も徐々に手を付けだしている印象です。

 

競合・アート界全体への支援例

メガギャラリーは既に自社サイトでオンラインギャラリーを開設しており、先日の下記記事でも触れたようにメガと中小とで対応能力の格差が見受けられていました。

この点、メガの一角であるDavid Zwirnerは、昨日、Platform: New Yorkというオンラインギャラリーを立ち上げました(~5月1日)。これにはニューヨークの12の小規模ギャラリーが招待されており、それぞれ1アーティストの作品を2点展示することになっています。本プラットフォームへの出展料や販売手数料はなく、ニューヨークという街のアートに関するエコシステムを守ろうという意識が感じられます。

同プラットフォームのロンドンバージョンも、4月中に立ち上がる見込みです。

 

[2020年4月7日追記]

ガゴシアンも動きました。準備を数か月又は数年かけて行っていたのに展示機会を失ったアーティストに、オンラインの展示の場を設けるとのこと。Artsit Spotlightと銘打つこの取組では、毎週一人のアーティストの作品一点が48時間限定で購入可能な状態で「展示」されるとのことです。

 

社会全体への支援例

Hauser & Wirthは、社会全体への貢献を決めました。自社のオンラインプラットフォームにおける収益の10%を、WHOの「新型コロナウイルス連帯対応基金」へ拠出するとのこと。アートは社会の一部であるという、大手の意気込みを感じます。

 

[2020年4月30日追記]

同ギャラリーは、5月9日から、所属アーティストではなく、ギャラリースタッフや関係者の作品の販売を開始すると発表しました。売上の10%拠出は同上ですが、スタッフやその家庭の収入支援という意味もありそうな取組みです。

 

[2020年4月18日追記]

White cubeは、アーティストのハーランド・ミラーさんと協働でアート作品のチャリティー販売を開始しました。一点5,000英ポンド(約67万円)で250点の限定販売。売上は、全額この状況下で戦っている最前線に寄付されます。この作品の通常の市価からすると、とても良い話だと思います。

 

感想は?

メガギャラリーからは、自社の競争優位に安住することなく、アーティストとも直接の繋がりがある中、アート界としてなんとか苦境を乗り越えようと模索している様が伺えます。

他方、サザビーズは、大規模な解雇・休職・給与カットを図っています。同社は、昨年「コストキラー」とされる通信業界のビリオネアに買収されました。他オークションハウスに比べても素早くコストカット(人財を安易に「コスト」と分類してよいものかは疑問ですが)を図る動きは、その影響もあるのでしょうか。

各人の持ち場における出来うる行動によって、一日でも早く状況が沈静化することを願ってやみません。

 

[2020年4月17日追記]

米国美術館やアートフェア主催会社の対応について、美術手帖さんがきれいにまとめています。

ではまた。