欧州アートログ

ヨーロッパにおける企画展、ギャラリー、アートフェア等のログを淡々と書き記します。

Frieze NY Viewing Room / コロナ禍におけるアートフェア [Log20]

ウェブサイト上で開催されたFrieze NY Edition Viewing Roomsを訪問しました。その模様を淡々と書き記します。

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Frieze Viewing Rooms より。Open直前画面の様子

 

記事のポイント

  •  Frieze New York 2020中止を受けて初開催
  • 物理的フェアの代替としては物足りない
  • ポスト・コロナの方法として定着しだした?

 

Viewing Room とは?

Art BaselTEFAF等と並び最も重要なアートフェアであるFrieze。今週末にNYでの開催が予定されていましたが、コロナ禍により中止となりました。その代替策として本日より15日までの間、オンラインで一般公開(6日・7日にVIP公開)されたのが、Viewing Roomです。

主催者発表によると、200以上のギャラリーが参加。物理的フェアで行われるキュレーションされたプログラムも実施されています。コロナ禍で苦しんでいるであろう設立10年未満のギャラリーが個展を行う「Frame」、シカゴで女性参政権が認められて100周年を記念し、同地女性作家の作品を紹介する「Chicago Tribute」等です。

なお、Art Baselも3月にオンラインでフェアを開催しました。下記は、その際の記事となります。 

 

どんな仕組みだった?

Art Basel Online Viewing Rooms(以下「AB」と記載。)の時と同様、コロナ禍を受けたオンラインフェアの仕組みについて、ABとの違いを交えながら、触れたいと思います。

登録を済ませウェブサイトに入ると、ギャラリーの一覧がアルファベット順で現れたり、ラジオボタンでギャラリーや作品を絞り込むというUIは、ABに似ていました。作品をクリックすると詳細情報に入っていく、価格が提示されている等の点もAB同様です。

他方、ABと異なり、同一背景で作品画像が提示されるという仕組みは採用されていません。各ギャラリーが準備した作品写真が、そのまま掲載されます。この点、アプリを使うとAR(拡張現実)技術でおうちの壁に作品を掛けたり出来る!のがウリだそうですが、イケアの家具じゃないんだからという気もします。

Viewing Room公開と合わせて、世界で最も「人気」のアーティストこと艾未未(アイ・ウェイウェイ)さんとHuman Rights Watchを長年率いるKenneth Roth代表との対談が公開されています。中国政府は2008年の四川大震災の時と同じく隠蔽的対応をしているとの刺激的な出だしから、危機対応により国家の存在が増大することに対するアートの役割等の議論がなされます。米国大統領が色々言っている中、他方で、中国が再稼働し同国の購買力が商業的には大事だと思われる中、一般公開初日にこのインタビューを据えるとは、正に「刮目せよ」という感じ。

 

感想は?

ABの際にも触れたとおり、積極的にクリックして行かなければならない仕組みだと、歩き回り・見て回りによる未知のギャラリー・アーティストとの「出逢い」といった物理的フェアの機能は代替出来ないというのが感想です。一覧にして色々見ても、サイズや素材感を含めた情報をモニタで知覚するのはどうしても難しい。また、展示されている約1,600万円のバナナが食べられてしまうなんて楽しみ(?)もありえません。

他方で、上記のインタビューのように、関連イベントが充実しやすく、いつでもアクセスできるというのは、大きなメリットと言えます。

思えば、ABのオンライン化に際しては色々ニュースとなった一方、Frieze NYのオンライン化についての反応は淡泊なように思えます。コロナ流行からの時間の経過とともに美術館や大手ギャラリーが相次いでオンラインコンテンツを充実させて来ており、ポスト・コロナの在り方が少し定着したということかも知れません。

高い参加費を支払い、航空機を使って作品・スタッフと参加者とが移動するというスタイルは、様々な観点から見直しが必要ではないかという声はコロナ以前から強かったところ、何らかの見直しは不可避でしょう。

なお、本記事は、オンライン鑑賞できる期間限定フェアに関する内容であることから速報性を重視し、一般公開直後にウェブサイト訪問の上で書き上げました。今後、集客等のデータが明らかになった場合、適宜追記していきます。([2020年5月16日取消し:15日に閉幕したものの、取り立てて報道等がなかったため。本当に反応が淡泊で驚愕])

ではまた。

 

[2020.10.16追記] 秋に開催されたFrieze Londonに関する内容は下記記事をご覧ください。

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