欧州アートログ

ヨーロッパにおける企画展、ギャラリー、アートフェア等のログを淡々と書き記します。

欧州で最も重要なフェアの一つ (コロナ禍閉鎖直前) / TEFAF Maastricht 2020 [Log6]

マーストリヒトで開催されたTEFAF Maastricht 2020に行ってきました。その模様を淡々と書き記します。

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記事のポイント

  • TEFAFは、 世界で最も重要なフェアの一つ
  •  著名アーティスト作品は一ひねりされたものが多い
  •  訪問日は、出展者も来場者も盛況だったが…
 

TEFAFとは?

米国NYでも開催されるTEFAFは、「The European Fine Art Foundation」の略。その名のとおり欧州が本場。 マーストリヒト条約でもおなじみの開催地は、地理的に西欧の「真ん中」とも言える場所です。オールドマスター、コンテンポラリー、古代の石器、宝飾品、江戸時代の甲冑、インテリア等、美術品を幅広く取り扱う本フェアには、世界中から約280のディーラーが集まりました。今回で33回目の開催であり、世界で最も重要なフェアの一つとされています。

 

どんな作品があった?

フェア最高価格で取引されたゴッホの絵画、天井にまで迫る中国の陶芸品、宮殿のようなブースにおかれたマイセン、モダン家具、贅を尽くしたティアラ等々、幅が広すぎて書くとキリがないほど、月並みな表現ですが多種多様な作品がありました。

コンテンポラリーに分類される作家のものについて、同様の「一ひねり」を感じる作品を見かけたのが印象的でした。例えば、近年のフェアでよく見かけるフォンタナでは、従来よく取り扱われていたキャンバスを切った作品について、媒体を変えたもの、枠がついたもの等、少しひねった作品が多く展示されていました。その他、近年のフェアでよく見かけるアーティストのものは、人口に膾炙した作品から少し通好みに移行している感じを受けました。

日本関係では、李禹煥の作品が多かった印象です。

 

新型コロナウイルスの影響は?

事前に3つの出展取りやめがあったのもの、フェア自体はなんとか開催にこぎつけました。最初の数日のうちに重要な取引は進行し、出展者に聞いたところ、懸念していたほどの落ち込みはなく、リスクを取った主催者への感謝が聞かれるほどでした。

しかし、開催期間中(7日~15日)の半ばに、出展者の一人が新型コロナウイルスに感染していたことが判明し、11日19時、約半分の期間をもって急遽閉幕となりました。このような中止は、同フェア初めてのことです。

当該週の後半には、大陸諸国で美術館はおろかレストラン等まで営業を制限する動きが出たことから、いずれにせよ迅速は閉幕はやむを得なかったものと思われます。

 

[2020年3月26日追記]

本日付の報道*1によると、出展者・来場者のうち25人を陽性反応を示しており、開催判断について主催者への批判が出てきているとのこと。その後の欧州情勢を踏まえると、後知恵的に批判したい気持ちが生じるのも分かりますが…。

 

感想は?

主催者発表によると、開催期間中の来場者数は約28.500人。昨年の来場者数が約70,000人であったことを鑑みると、厳しい情勢ながら、約半分の期間で多くの来場を得たと考えられます。

TEFAFの伝統や位置づけからして当然ではあるのですが、個人的には本フェアに「大味」感を覚えます。古き佳き欧州(そんな時代があったのかはともかく)への回顧のような雰囲気があります。当然、その正否は日本人には分かりようがありませんが。

とはいえ、大都市から離れた地方都市で大規模フェアを毎年続けていて、其処に世界中から見ごたえいっぱい素晴らしい作品がやってくる仕組みに、唯々驚嘆を覚えます。特に今回は、様々な方々が苦心して開催されたフェアであり、その努力と決断とに重ねて驚嘆するところです。

ではまた。

*1:The Art Newspaper "Tefaf Maastricht comes under fire as Covid-19 cases surge among the fair's attendees"