欧州アートログ

ヨーロッパにおける企画展、ギャラリー、アートフェア等のログを淡々と書き記します。

コロナ禍でギャラリー売上36%減 / Art Basel & UBS レポート [Log32]

本日(9日)、Art Basel及びUBSから、「The Impact of COVID-19 on the Gallery Sector」が発表されました。その概要を淡々と書き記します。

 

記事のポイント

  • ギャラリー売上は平均36%減(2020年前期)
  • ギャラリーの1/3がスタッフを解雇
  • 完全閉鎖したギャラリーは2%にとどまる
  • アートフェアは、今後も見通しが厳しい
  • 売り方はオンライン、世代はミレ二アルが重要に

 

はじめに

コロナ禍に関しては本ブログでも累次にわたり取り上げてきており、先日まとめ記事を投稿しました。まさか、直後にArt Basel & UBSから詳細なレポートが出るとは。

 

本調査レポートは、毎年3月にアート市場に関するレポートを発表してきたArt Basel & UBSが、コロナ禍を受けて、60か国795ギャラリー(過半は欧州)の調査結果として取りまとめたものです。

●本年3月のレポートについての記事はこちら

 

いち早く日本語で概要をお伝えしようと思っていたのですが、今回は美術手帖さんの手が早かった!

敬意とともに、本レポートについての美術手帖さん記事のリンクを貼っておきます。

 

本ブログでは、より簡潔にポイントをまとめるとともに、同誌記事にはない情報を少し付加してお伝えしようと思います。

 

コロナ禍のギャラリーへの影響について

回答したギャラリーの93%はコロナ禍での一時閉鎖を経験しており、平均閉鎖期間は10週間に上ります。本調査が行われた7月上旬時点でオープンしているギャラリーは79%でした。

2020年前半のギャラリー売上は平均して36%減(対前年同期比)、特に小規模のギャラリーで影響が大きかった模様です。また、雇用について、3分の1のギャラリーがスタッフの解雇を行いました。雇用については、大きさとの関係性が無いように見受けられます。

コロナ禍を受けて完全閉鎖したギャラリーは、2%にとどまっています*1

 

今後の見通しについて

2020年の年間売上見通しについて、79%の回答者が売上減が続くと考えています。雇用については、75%以上が現状維持とする一方、15%が更なる減少を見込んでいます。

アートフェア については、91%のギャラリーが年内の販売増は見込めないとしており、来年も2/3が同様に販売増加希望薄と見込んでいます。多くのギャラリーが、参加するフェアを絞り込むとも回答しています。昨年のデータによると、フェアはギャラリー・ディーラ売上の46%、支出の29%を占める大イベントでしたが、その地位が大いに揺らいでいます

一方、オンラインでの販売割合が、全サイズのギャラリーで伸びています。昨年の約10%から本年前期は約37%へとシェアを拡大。特に伸びが顕著なのは、規模の大きなギャラリーです。

コレクターのうち、ミレ二アルが存在感を示しており、回答者の約半数を占めます。同世代はアートへの支出規模が大きく、ベビーブーム世代コレクターの約8割が5万ドル以下の支出(2020年前半期。それでも数万ドル支出してたら多い気もしますが)であるのに対し、ミレ二アルの約7割が10万ドル以上の支出をしています。この世代は43%がインスタグラム経由で作品を購入しているというのも特徴です。

 

ではまた。

*1:レポートにも記載されていますが、閉鎖したギャラリーは回答すらしない蓋然性が高く、実際はもっと多いものと推察されます。