欧州アートログ

ヨーロッパにおける企画展、ギャラリー、アートフェア等のログを淡々と書き記します。

光のアーティスト ジェームズ・タレル展@ロンドン・PACE / James Turrell [Log7]

Paceで開催されている「James Turrell」に行ってきました。その模様を淡々と書き記します。

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※ Pace Londonは、本記事掲載日現在、一時閉鎖されています。

 

記事のポイント

  • 誰が名付けたか「光の魔術師」 
  • 見るという知覚自体が作品の対象
  • 日本で「魔術」を体験するには?
 

ジェームズ・タレルさんについて

現代アートの巨匠の一人ジェームズ・タレルさん(1943~)は、カリフォルニア生まれ。16歳で飛行免許を取得し、本人のホームページに拠れば生涯12,000時間以上は空に居らっしゃったようです。ANAの現役パイロットの最長が約19,500時間(2014年データ)、昨年引退された日本最長飛行のパイロットの総飛行時間が約27,000 時間ということを考えると、とんでもなく長時間飛んでいます。

これは、彼の創作活動と大きくつながっています。曰く、「空はスタジオ、素材、そしてキャンバス」。誰が名付けたか「光の魔術師」と呼ばれる彼の作品は、光を対象としているのではなく、光の作用により「見る」という知覚そのものを題材としています。

 

どんな作品があった?

3つの作品が展示されていました。円又は楕円の光が、じんわりと色を変えていく。表現力が乏しく、文字にするとこうなってしまいます。雰囲気はギャラリーのページをご覧頂くとしても、それでも何も伝えられていません。この作品と対峙し、移ろう光に神経を集中させていく感覚それ自体が作品であるためです。

空間に身を置いて見える光を感じるという作品の特性上、ご興味があればぜひ一度体感頂きたいと思います。

 

感想は?

半ば無自覚になりがちな自己の感覚。それを意識する中で起こる作用。タレルさんの作品は、其れらに向き合い、調整する体験を与えてくれます。

 

上記で「体感頂きたい」と書きましたが、日本には彼の作品を体感できる素晴らしい空間が4か所にあります(空間型でないものは他にもあります。)。

 ① 熊本市。同市の現代美術館内図書館の天井が作品となっています。

 ② 直島。地中美術館と家プロジェクト「南寺」。

   地中美術館は、異なるタイプの「空間」を体験できます。

   「南寺」は、瀬戸内国際芸術祭の期間中、整理券にご注意下さい。

 ③ 金沢市。21世紀美術館。

   此方には装置体験型の作品もありますが、早い者勝ちのシステムです。

   「空間」については、無料でお楽しみ頂けます。

 ④ 十日町市。その名も「光の館」。本当に、泊まってみたいです。

 

均質な光に包まれ、上下左右や距離感を失う全体野。空で光に包まれる経験が、彼の作品のきっかけと言います。その作品に没入すると、ぼぅっとした、ふわふわした感覚を覚えるのですが、彼は安全に飛行機を操縦できているのでしょうか。

ではまた。

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