ファン・エイク展 @ベルギー・ゲント美術館 / Van Eyck. An Optical Revolution [Log8]
ゲント美術館(ヘント美術館)で開催されている「Van Eyck. An Optical Revolution」に行ってきました。その模様を淡々と書き記します。
※ 美術館は、本記事掲載日現在、4月5日まで一時閉鎖されています。
※ 写真は、展覧会のものではありません。ブルージュ(ブルッヘ)にて撮影しました。
記事のポイント
- 油彩に革命を起こし、芸術に引き上げた立役者
- 現存作品の約半分が終結した史上最大の展覧会
- 本当に、細部と光の表現力がすごい
[2020年5月3日追記]
ウェブサイト上でヴァーチャルツアーが始まりました。ここまでファン・エイクの作品揃う機会はないので、ぜひ!ご覧ください。
ファン・エイクさんについて
ヤン・ファン・エイクさん(1390頃~1441)は、初期フランドル派を代表する画家。ロンドンのナショナルギャラリーにある「アルノルフィー二夫妻像」等で有名です。従前の絵画が神話や貴人の肖像の「理想」を描きがちであったのに対し、彼の絵画の特徴は、室内装飾や自然などを「あるがまま」に描いたところにあります。
構図について、肖像といえば側面像が伝統であったところ、斜めから描くということを始めました。この方法は、「モナリザ」にも採用されているよう、当時の芸術の中心であるイタリアにも伝播しました。
技法について、彼は油彩を本格的に完成させた画家とされています。特に、室内光やガラスの透明な表現を確立させました。
また、ブランディングについて、作品に署名するという行為の嚆矢と言えます。
彼は、英仏百年戦争中うまく立ち回りブルゴーニュ公国の版図を拡大したフィリップ3世公の下、外交官としても活躍しています。公とポルトガルの王女との婚姻に際しては、同国に行き彼女の肖像を描いています。情報のやり取り方法として、絵は数少ない強力なツールだったのでしょう。
どんな作品があった?
先日紹介したピカソは多作で知られていますが、エイクは寡作で知られています。現存作品は、約20点。その約半数がゲント美術館に集合していました。フランドル地方としてとても力の入った企画展で、ベルギー・オランダ観光局合同サイトにおいても2018年から続いた絵画年の締めくくりとして紹介されています。
彼の生い立ち、当時のフランドルの状況、彼の作品が後世どう称えられているか等、焦らしつつ気分を高める展示たちを経て、作品をどどっと展示していました。展示構成としては、現地にあるマスターピースである後述の「ゲントの祭壇画」(「ヘントの祭壇画」)をカギとして、アダムとイヴ、マリア、肖像画等のテーマをもった世界各地から集めた作品へと誘います。それぞれ、どんな点が「革命」だったのかという企画テーマに沿った解説がなされていました。
なお、展示は撮影禁止。したがって、本記事の写真は別のところで撮影したものです。
周辺地域にある作品について
ゲント(ヘント)には、先述のマスターピースがあります。 お兄さんとの合作とされる本作。とても立派な大作です。大聖堂の中に収められていて、4ユーロ(現金払いのみ)で拝観できます。本年末には、新たにビジターセンターが出来て、値上がりするようです。
本作については、とても力の入ったwikipediaの記事があります。同記事の来歴からは、この作品がどれだけ欲され、紆余曲折を経て現存しているかということを感じることが出来ます。1枚だけ失われているパネルがありますが、その在り処については、おそらく盗んだのではないかという者が今際の際に「あれがある場所は、実は…」と言いかけて亡くなったそうで、神の下に捧げられた形になっているそうです。
また、電車で約30分のブルージュ(ブルッヘ)のグルーニング美術館には、本記事の写真とした「ファン・デル・パーレの聖母子」とエイクの奥さんの肖像画があります。
感想は?
エイクの作品の凄さは、構成力もさることながら細部にあると思います。写真のとおり、近くで見たくなること請け合いです。衣服、カーテン等の布類、装飾品、植物等が、緻密に描かれています。
その上で、全体を見ると遠近が崩れていない。おそらく、光を捉えて表現できるからだと思われます。窓から室内に入り込む光(左から入りがち)や、窓(レンズ模様の窓を描きがち)の透明感ある表現力が、すごいです。
冒頭、「あるがまま」に描いたところが彼の作品の特徴だとしましたが、描けるだけの画力を持っていたため「視覚の革命」が起こせたという天才の力に畏怖を覚えます。
エイクの生涯と代表作品については、下記のブログ記事(3記事)に綺麗にまとめられています。ご興味あればぜひご覧ください。
前の記事でタレル展に触れました。彼は視覚そのものを題材としていますが、「あるがまま」を表現するアートを確立させたエイクあってのテーマなのかもしれません。
ではまた。