ダミアン・ハースト:End of a Century @ ロンドン・Newport Street Gallery [Log39]
アーティスト所有のギャラリーであるNewport Street Galleryで開催されている「End of a Century」に行ってきました。その模様を淡々と書き記します。
ダミアン・ハーストさんについて
ダミアン・ハーストさん(1965~)は、イングランド西部ブリストルで生まれ、北部リーズで育った英国人アーティスト。
1990年代にロンドン、ゴールドスミス出身者を中心に現代アート界で活発な活動を見せたYBAs(Young British Artists)の旗手の一人です。1988年に彼の企画した展示会「Freeze」で大富豪のアートコレクター(チャールズ・サーチ)に見いだされ、今や現代アート界の巨匠の一人となっています。
代表作は、輪切りや腐敗状態で放置された動物や、カラフルなドットが一面に広がるスポット・ペインティングです。通底しているテーマは、生と死、金と欲とも言われています。
ロンドンには、牛と鶏とがホルマリン漬けになった彼の作品を中央に配置したお肉料理が売りの斬新な(露悪的な?)レストラン(Mark Hixというブリティッシュ・ガストロノミーの代表格シェフが運営)もありました(数年前まであったけど、いまも営業しているのかは不明)。
2020年4月には、このドット作品を切って1ドットごとを売りさばくという別のアーティストによるプロジェクトがありました。アート作品を「投資対象」としてシェアオーナー制度が出てきていることへの批判が込められたものです。
夏に予定されていたパリ・カルティエ現代美術財団における個展では、新たなシリーズとして桜をテーマにした作品を発表する予定でした。
コロナ禍にあっても巨匠の活動は止むことなく、今冬(1月19日~2月23日)は、スイスのリゾート村サン・モリッツで、凍った湖の真ん中に巨大彫刻を設置する等の約40点の作品展示を行う予定となっています。
どんな作品があった?
初期の代表作であるPharmacyシリーズや、輪切り系、スポットペインティング等、彼の作品が余すことなく展示されていました。
一番見たかった彼の代表作の一つ、"A Thousand Years" (1991)も展示されていました。巨大なガラスケースの一方にウジの入った箱が、もう一方に切断され腐敗状態の牛の頭部と電撃殺虫器(コンビニとかでみかける青い光のアレ)が入っており、その間を行き来できるよう穴があけられているというもの。無限の時間、蠅が産まれ、死ぬ世界がコンパクトに凝集さえたものです。
ちなみに、クリスマスから、ハーストさんのインスタで、彼自身が展示作品を開設する動画が1日1本アップされています。自分なりの鑑賞体験の後でこういう体験が出来るのは、とても良いです。
感想は?
10月から始まった本展覧会ですが、11月当初からの約一か月のロックダウン、クリスマス前の変異種登場による制限強化と、期中の来場がほぼ困難となっています。
私は、10月に予約した段階で12月中旬以降しかスロットが取れず、それが幸いこれら制限の合間にはまった結果、実物を鑑賞することが出来ました。
生と死、欲と金をシニカルに露悪的に表現する作品が多い中、この時期の鑑賞は、イケイケな経済状況で見るのとは違った味わいを持ったものとなりました。
一方で、ボラタイルな状況に過去最高益を上げる金融会社や、史上最高値を付けるNY市場等、歪みが露見している中でもあり、展示にあった彼の作品がオークション会場で高値で落札されている様を風刺したメタ感ある作品も「響く」ものの一つでした。
良い年末年始を。ではまた。