塩田千春: Navigating the Unknown@ロンドン・KÖNIG LONDON [Log37]
KÖNIG LONDONで開催されている「Chiharu Shiota: Navigating the Unknown」に行ってきました。その模様を淡々と書き記します。
記事のポイント
- 昨年森美術館で入場者数約67万人を誇った塩田さん個展
- 作家の魅力の凝縮された展示
- コロナ禍の不安な時代を感じる
塩田千春さんについて
塩田千春さん(1972~)については、ここで私が書くより、昨年の展示に関する森美術館のページをご覧いただいたほうが早いかと思いますので、リンクの添付にて代えさせて頂きます。
なお、塩田さんの作品は、2018年のMasterpiece Londonで大々的に展示され、フェア冊子のアイキャッチになりましたので、ロンドンのアート関係者にとてもよく知られているものと思います。
どんな展示があった?
塩田さんが拠点とするベルリンが本ギャラリーの本拠地で、本展示はそのロンドン「支店」で開催されたものです。
タイトル「Navigating the Unknown」ですが、ご本人のホームページによると、邦訳は「さまよえる航海」となるようです。二つの語義を考えると、なんとなく作者の意図も感じられるようです。塩田さんの作品に通底するポイントですが、会場全体に、不安や困惑といった目に見えない感情が渦巻いているような気がしました。
写真では明るく見えますが、黒い糸に囲われ支えられた舟3艘は、闇夜にさまよう小舟にも、宇宙へ乗り出す宙船にも、不確実な状況に翻弄される我々のようにも見えます。また、手前の白糸の中の眼鏡は、それを装着しているはずの人間存在の不確かさのようにも、「見えていなさ」にも感じます。
本展示については、ギャラリーのホームページで展示全作品の画像を見ること及び3Dツアーを鑑賞することが可能です。塩田作品の魅力が濃縮された展示だと思いますので、ぜひご覧ください。
[2021.01.23追記]
同ギャラリーページで、ベルリンでの個展の様子がVR体験可能となっています。ぜひ。
感想は?
展示作品は全て2020年に制作されたもの。明らかにコロナ禍が反映された作品であると感じました。
特に、ドローイングの作品は「Behind the Window」、「Lost Information」、「Empty Bed」といたタイトルで、思わず長時間それらの前に佇み、2020年という年を思い返してしまいました。
12月初めにロックダウンが緩和されたロンドンも、その後感染が急拡大。保健相曰くウイルスが変異したとか。ワクチンが出回り出しましたが、感染の拡大は止むところを知りません。結果、半月とたたず16日から再び制限が強化されます。
このような状況に人類全体が右往左往する一年でしたが、本展示はとても沁みるものとなりました。
ではまた。