欧州アートログ

ヨーロッパにおける企画展、ギャラリー、アートフェア等のログを淡々と書き記します。

ホックニー約33億円で落札! / Sotheby's Contemporary Art Evening Auction [Log2]

月半ば、サザビーズの現代美術オークションに行ってきました。その模様を淡々と書き記します。

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記事のポイント

  •  バンクシー、クライン等の「大物」が取引
  •  目玉はホックニー「スプラッシュ」
  •  ロンドン現代アート市場は落ち着き気味か

  

どんな作品が取引された?

この夜は、現代アートの作品の中でも、選りすぐりの作品が取引されました。最近、大手ギャラリーや美術館の企画展でよく見るアーティストの作品も多く、かなりの高額取引が期待されるラインナップでした。

結果、この晩のオークションでの売上総額は、約9,250万ポンド(=この日の為替レートで大体132億円)でした。これだけ見るととても高額ですが、下記のとおり、現場の雰囲気は単に高揚感に包まれて…とは言い切れないように思えました。

 

目玉となったのは?

サザビーズのウェブサイトにアップされているとおり「大物」が目白押しで、ダレ場なんてないイブニングセールでした(各作品画像は、リンク先をご覧ください。)。

冒頭の目玉はバンクシー。おりしも1月末に英国がEUを離脱したところ、Brexit国民投票を題材にした作品。落札予想40~60万ポンドのところ、95万(手数料別)で落札。翌日の報道*1によると、共和党支持の米国の銀行CEOが落札者とのこと。

勢いづいたかと思った会場ですが、バーゼリッツ、バスキア、リヒター辺りの落札額が伸びない。

そしてロット番号16、本日の目玉、ホックニーの「スプラッシュ」が登場しました。落札額は日本でも報道されましたが、これ1点でこのセールの総額の1/4を占める「超大物」です。報道では成果額のみが強調されていますが、落札予想2,000~3,000万ポンドのところ落札額2,100ポンド(手数料別)だったので、現場は「伸びないな」という雰囲気に包まれた気がしました。

その後も、イブ・クライン、フランシス・ベーコン、スティンゲル、ゴームリー、KAWS等の「大物」が現れますが、多くの作品が手数料込でも落札予想の下のほうに張り付いている印象でした。

 

「スプラッシュ」の別バージョンについては、こちら

 

感想は?

そんな中、印象的だったのは、マウリツィオ・カテランの作品。正直、誰だかピンとこなかったのですが、昨年末にとても有名になった作品:マイアミ・ビーチのバナナの作家です。この方の作品、なんと落札予想下値の倍額以上で落札されました。今、勢いがあるアーティストということでしょう。

本作品の競りはとても激しかったのですが、サザビーズ香港の寺瀬由紀さんが、おそらく東アジアの誰かのために競り落としました。寺瀬さんは、他の作品でも果敢に競っておられました。

その後の報道*2によると、この晩の46作品のうち、8作品がアジアのバイヤーにより落札されたとのこと。

アジア勢及びアメリカ勢は頑張っていましたが、それでもなお、ロンドンの現代アート市場の一旦の落ち着きを感じさせる、そんなイブニング・セールでした。

ではまた。

*1:The Art Newspaper "US banker buys Brexit Banksy at Sotheby's, making a bigger splash than David Hockney's pool painting"

*2:同上