欧州アートログ

ヨーロッパにおける企画展、ギャラリー、アートフェア等のログを淡々と書き記します。

陶磁器等のクラフト・アートフェア / ロンドン・Collect 2020 [Log1]

ロンドンのサマセット・ハウスで開催されたCollect2020のPrivate viewingに行ってきました。その模様を淡々と書き記します。

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記事のポイント

  •  ロンドンの現代クラフトアート専門フェア
  •  LoeweのCraft prizeを中心に良作が豊富
  •  日本勢は頑張っているも、韓国の熱がすごい

 

Collectとは?

Collectは、英国Crafts Councilが主催する現代クラフト・デザインに関する国際アートフェアです。2004年から開催されているフェアで、今年は10年来の会場であったサーチギャラリー(南西のチェルシーに所在)からサマセットハウス(ど真ん中)に移動しました。出展者に聞くとサマセットハウスは部屋が細切れ過ぎて展示しにくくなったとのことでしたが、18~19世紀の建物なので、仕方ないのかもしれません。

欧州を中心に、日中韓からもギャラリー、ディーラー等が出展。計42の出展者がスウェーデンからウガンダまで幅広いアーティストの作品を取り扱っていました。フェアの出展者にはスタンドのほとんどの品を5年以内の新作にすることが求められるため、最新のクラフトアートの勢いを知るに良いフェアです。

 

どんな作品があった?

陶磁器、金工、木工、ガラス細工、装身具、織物等、現代工芸アート作品が幅広く展示されていました。

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写真は、北欧の作家のセラミック作品です。家具の展示も多く、木樽を半分に切ったような素敵なスコットランド産の椅子もありました。ガラス・オブジェクトは、ボヘミアングラスでおなじみのチェコからの出展作品がとても美しかったです。

全体として、Loewe Foundationが毎年行っているCraft Prizeの受賞作家又はノミネート作家の作品が多く、かつ、目立つように取り扱われていました。2016年の初回からまだ実施3回ながら、国際的なクラフトアワードとしての地位を確立した感のある同コンペ作家が注目されるのは自然といえば自然ですが、Loewe Foundationが本フェアのサポーターであることを鑑みるに、仕組みですね。

 

日本人作家の作品もあった?

日本からの出展ブースは1つのみでしたが、在欧ギャラリーが取り扱う日本人作家の作品は多かったです。

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写真は、ロンドンで作陶されている岩本幾久子さんの作品です。素直にかっこいいです。岩本さんの作品は、大英博物館内でも売られています。彼女と同じ東ロンドンのアーティストコンプレックスにスタジオがある平井明子さんの作品もありました。平井さんは、Loewe Craft Prize 2019のノミネート作家で、以前からロンドンで高いプレゼンスを誇る作家さんです。

日本にいる作家さんの作品も沢山ありました。2月に発表されたLoewe Craft Prize 2020のファイナリストである崎山隆之さんの作品や、備前の隠崎隆一さんの作品、若手では平岡純平さんの作品など。

日本のクラフトは各作家の実力が高く、陶磁器の分野をはじめ、国際的に高く評価されています。

日本唯一のギャラリー出展は、京都市産業観光局が実施している「Savoir-faire des Takumi」というプロジェクト。エッジのきいた作品が多く、とても印象的でした。パリ、ロンドンと来て、3月末には日本橋高島屋で展示があります。

 

韓国がすごい!

感心したのは、作家もギャラリーも韓国はアクティブだなぁということ。

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写真の壁にある華のような作品は、ロンドンのギャラリーが出していたMyung Nam Anさん(米国在住)のもの。映えるので、インスタにたくさん掲載されています。

頑張っているのはアーティストだけでなく、出展者も同様です。この三年間の出展者数日韓比(各年プレスリリース掲載)をみると、下記のとおりです。今年は大きく差が出ました。
2020 日1:韓5
2019 日1:韓2
2018 日1:韓3

張り合う必要はないのですが、プレゼンスが気になるのは事実です。しかも、世界陶芸ビエンナーレを開催している韓国の利川市は、ロンドンのギャラリー(上記日韓比の外数)を全面バックアップしており、立派なパンフレットまで準備していました。

文化芸術分野で国際的なプレゼンスを高めようという韓国の戦略的勢いを感じます。

 

感想は?

2016年のLoewe Craft Prizeの開始や、昨年のニューヨークにおけるObject & Thingの初開催等に見られるような、実用としてのクラフトを超えたアートとしてのクラフトが志向される流れが継続し、強化されている印象でした。

平面の世界でカメラが写実画から抽象画への遷移を促したように、工芸の世界ではマス・プロダクションの誕生・進化によりデザイン志向とアート志向とに分化が進み、近年それが一層純化しつつあるように思えます。汎用品なら建築物でさえも3Dプリンタで作れつつある中、クラフトアートの世界では、プログラミング出来ない感性の表現を際立たせる作品が増えていると感じます。

今後のこの分野の動きが楽しみです。

ちなみに、会場は、動線という点ではかなり悪かったですが、単なる四角いブースでないことから実際の炉棚や窓台に置いた様が想像しやすいという点は良かったと思います。特に、陽に映えるガラス作品の美しさは印象的でした。

ではまた。