欧州アートログ

ヨーロッパにおける企画展、ギャラリー、アートフェア等のログを淡々と書き記します。

近年大注目の日系米国人アーティスト / ルース・アサワ展@ロンドン・David Zwirner [Log3]

David Zwirnerで開催された「Ruth Asawa / A Line Can Go Anywhere」に行ってきました。その模様を淡々と書き記します。

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記事のポイント

  •  ルースさんは日系米国人。太平洋戦争で苦難
  •  近年、再評価の動き。お値段も急上昇中
  •  工芸とアートとの間への言及が此処でも

 

ルース・アサワさんについて

ルース・アサワさん(1926~2013)は、福島県出身のご両親の下、カリフォルニアに生を受けました。多感な10代半ば~後半は太平洋戦争の時期であり、日系人であることから強制収容されるとともに、家族とも離れ離れになってしまいます。

1946年、伝説的な存在となったブラック・マウンテン・カレッジに入学します。そこで出会った建築家の男性と1949年に結婚し、その後子供6人の大家族を築きます。

同時期、アサワさんは従来の重たい彫像概念への挑戦を始めます。写真のような作品づくりを始めたきっかけは、1947年のメキシコ旅行。現地のクラフトマンから、ワイヤーで籠を作る方法を教わったのだそうです。

 

近年、再評価されている?

ギャラリーの資料によると、早くも1950年代にはソロ展覧会を開催し、米国内では知られた作家さんとなったようです。作品は、NYのMoMA、グッゲンハイム、サンフランシスコのデ・ヤング記念美術館等に入っています。サンフランシスコのあちこちの噴水もデザインされているようです。

日本では2015年にクリスティーズが展示を行っています*1。この時が日本初展示だったそうです。日本人好みっぽい作品を作る作家さんなのに。

今回のロンドンでの展示も、2017年にDavid ZwirnerがRuth Asawaの総代理ギャラリーとなってから初の米国外メジャー展示だとのことです。

このように、没後、活発な再評価の動きが見られる作家さんです。

 

感想は?

銅線を編み込んだ作品なので一個一個はとても重いはずなのですが、不思議な浮遊感が部屋いっぱいに広がっていました(様子は、ギャラリーのHPのプロの撮影にてご覧ください。)。造形に着目すると、細部はクラフト的に同じフォームを繰り返しながらも、全体を見ると棘皮動物を思い起こさせる有機的な形となっており、DNAらせんと生命との関係を想起しました。

アサワさんは、2002年に、「作品がクラフトなのかアートなのかはどうでもよいのです。それは他人がレッテル張りするもの。素材はたまたま選ばれたものであり、何でもよかった。大事なのは、ワイヤーのように普通のありふれた素材から、新たな定義を創りだすということそのものだと思うのです」(勝手に意訳)とおっしゃっていたようです。

下記の記事でも触れたアートとクラフトとの間(この概念区分自体を含め)への興味が、一層そそられる展示でした。

ではまた。

 

*1:参考:そのときの「青い日記帳さん」の記事