欧州アートログ

ヨーロッパにおける企画展、ギャラリー、アートフェア等のログを淡々と書き記します。

イザ・ゲンツケン「窓」展@ロンドン・Hauser & Wirth / Isa Genzken. Window [Log10]

Hauser & Wirthで開催されている「Isa Genzken. Window」に行ってきました。その模様を淡々と書き記します。

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※ Hauser & Wirth Londonは、本記事掲載日現在、一時閉鎖されています。

 

記事のポイント

  •  今を代表する女性アーティストの一人
  •  建築的なものを表現媒体とすることが多い
  •  「窓」の意味合いを再評価する風潮?

 

イザ・ゲンツケンさんについて

イザ・ゲンツケンさん(1948~)は、ドイツ北部のハンブルクから約45kmの小さな町(西独側)に生まれました。ハンブルグ及びベルリンで学んだ後、ヨーゼフ・ボイス、ゲルハルト・リヒター等の教授陣がいるデュッセルドルフ芸術アカデミーへ転籍。70年代半ば、数学的形態を作品とするミニマリストとしてデビューします。この時代の作品の企画展が、本年のアート・バーゼルの期間中(コロナウイルスによる延期前であっても、延期後であっても)にバーゼル美術館で開催予定されています。今、注目されていることが、このことからも良く分かります。

 

80年代には、ラジオのレディメイド作品や、それをコンクリートで型取りした作品を作成しています。情報の受信と伝達という今回の「窓」にもつながるキーワードが、これらの作品の問題意識とされています。

その後、建築的表現媒体を好みだします。これは、彼女の住むベルリンや彼女が好んだニューヨークの摩天楼に影響を受けたとされています。特にニューヨークの影響は大きく、現代的高層建築が鉄とガラスにより色を失っていくのと対称的に、彼女はその建築物に反映される活気や内面を色で表現したようです。

また、彼女は、ベルリン在住らしくテクノやパンク等にも影響を受けたといいます。

書き出すと文字数が多くなる彼女ですが、2014年にNYはMoMAで開催された展覧会「Isa Genzken: Retrospective」のウェブサイトには、豊富な写真と動画による解説があります。興味がありましたら、ぜひ覗いてみて下さい。

なお、日本における彼女の作品といえば、六本木ヒルズの「薔薇」金沢21世紀美術館には、「柱」シリーズがあります。

 

どんな作品があった?

大きく3種の作品が展示されていました。

一つは、写真のとおり飛行機のキャビンを実寸で再現したもの。窓は、閉じられていたり、半分だけ開いていたり。寝ていたり、酔っぱらっていたりした人の目のようです。度々大西洋を横断することで刺激を受けていた彼女にとって、飛行機とその窓には、大きな意味合いが込められているのかもしれません。

もう一つは、建築模型。「純粋階段」のように機能とは無関係に存在する窓、開口部が広場の外部スペースとシームレスな関係にある建築等の模型が並んでいました。

最後に、コンクリートによる造形物。一見閉じられているようで複雑なビルの隙間の裏路地のように開いている(こう考えると、どちらが内部空間でどちらが外部空間かがぼやけてくる)ものでした。

 

感想は?

個人的に、「窓」は最近の熱い論点となっています。

出だしは、東近美で訪れた「窓展:窓を巡るアートと建築の旅」。YKKさんが頑張ってきた「窓学」の一つの集大成であり、ロンドンにおいても日本政府官営ショールーム・ジャパンハウスでの展覧会が予定されていました(コロナウイルスの影響により今後の取扱い未定)。

また、先日触れたジェームズ・タレル展及びファン・エイク展も、光や窓といったものへの興味がそそられるものでした。

さらに、コロナウイルスの大流行による外出禁止は、「窓」という存在への意識を高まらせています。ギャラリーやオークションハウスのインスタでは「窓」に着目した作品の写真が流れていますし、先週末には下記のような記事もありました(絵をご覧いただければ伝わると思います)。

東近美もHauser & Wirthも当然予見出来ているわけがないのですが、図らずも、「窓」は世間の気分になっているのかもしれません。

 

なお、ゲンツケンさんの元配偶者であるゲルハルト・リヒターさんの展示についてのログも、よろしければご覧ください。

ではまた。