欧州アートログ

ヨーロッパにおける企画展、ギャラリー、アートフェア等のログを淡々と書き記します。

2019年 世界のアート市場は5%縮小 / The Art Market 2020 [Log4]

先週、Art Basel及びUBSから、「The Art Market 2020」が発表されました。その概要を淡々と書き記します。

f:id:EuroArts:20200306222027p:plain

 

記事のポイント

  •  2019年のマーケットは世界全体で5%縮小
  •  セクター別では、公開オークションが苦戦
  •  2020年の市場にもすでに懸念要因が

 

世界全体のマーケットは?

2019年(つまり足元のコロナウイルスの影響が出る前です。)の世界全体のアートマーケット規模は、641億ドルと前年より5%縮小しました。これは2年連続で続いていた成長がストップした格好となります。米中の貿易摩擦、香港の混乱、英国のEU離脱等と、アートマーケットの中心地たちが揺れた一年であったことが影響していると分析されています。

 

地域ごとでは?

アートマーケットのハブである米英中のプレゼンスは、2019年も健在でした。ただし、そのシェアは2%低下し、82%となりました。

米国は、世界シェアの44%を占め、売上は前年比5%の減でした。

英国は、世界シェアの20%を占め、売上は前年比9%の減でした。特にオークションセクターが20%低下しています。これは地政学的問題もあるでしょうが、下記のとおりセクターとしての影響もありそうです。

中国は、世界シェアの18%を占め、売上は前年比10%の減でした。うち、本土は9%の減、混乱した香港は25%の減でした。

大市場で唯一伸びたのは、仏国でした。売上は7%の増。世界シェアの7%を占めるようになりました。

 

セクターごとは?

ギャラリー及びディーラーのセクターは2%の伸びを示しました。マーケットシェアは4%伸びて58%を占め、2020年市場についてもポジティブな予想を示しているようです。このセクターの収入に占めるフェアの重要性が高まっています。2010年は30%だった収入比が、2019年には45%となりました。

他方、オークションのセクターは17%の減となりました。特に高額作品のパフォーマンスが低下しています。パブリックセールの低下が著しい一方、プライベートセールは増加しています。コレクターは、こっそり売却することを好むためです。

 

感想は?

アートマーケットの中心地たちが揺れて、2019年はトリッキーな一年となったようです。2020年は、コロナウイルスによるフェア中止等の動きに加え、欧米では新たなマネーロンダリング規制が導入されるという動きがある中、マーケットにどのような影響を与えるか注目されます。

先日下記の記事で書いたように、2020年に入っても、高額オークションには低調な様子が見られるところです。 

 

[2020年4月15日・30日、10月16日追記]

本記事公開後、新型コロナウイルスのパンデミックにより、欧米各国では美術館、ギャラリー等の閉鎖、フェアの中止という事態になりました。この点については、その後、下記記事を執筆・公開しています。併せて、御覧ください。

 

ではまた。